- 国名 イタリア
- エリア プーリア
プリミティーヴォのワインとともに
夕暮れがマンドゥーリアの石畳を柔らかな黄金色に染めるころ、ひとりの旅人は重厚な扉の前に立つ。
そこはパラッツォ・ドンナ・エリザベッタ。
1881年、若き貴族たちの愛の物語から生まれた館である。
扉を開くと、静寂に包まれた中庭に風が流れ、ジャスミンの香りがそっと旅人を迎える。
まるで時がゆっくりと巻き戻されるように、
館の壁に描かれたフレスコ画や磨き上げられた大理石が、
かつてこの場所で交わされた祝福や笑い声を語り始める。
朝になると、庭園に差し込む柔らかな光の中で目を覚ます。
遠くから聞こえる教会の鐘、オリーブの葉を揺らす風、そしてプーリアの太陽。
テラスには焼きたてのパスティチョットや地元の果実、
香り高いコーヒーが並び、この土地ならではの豊かさを感じさせてくれる。
館の主人であるドンナ・エリザベッタが大切に守り続けてきたのは、豪華さだけではなく、
人を家族のように迎える温かな心。
そのおもてなしは館の隅々にまで息づいている。
午後にはワイン畑が広がるマンドゥーリアの郊外へ。
太陽の恵みを受けて育ったプリミティーヴォの葡萄が風に揺れ、
この土地が古くからワインとともに歩んできた歴史を感じさせる。
旅人はグラスを傾けながら、何世代にもわたり受け継がれてきた土地の記憶に触れる。
そして館へ戻るころ、プールサイドには夕暮れの光が映り込み、
空と水面が溶け合う美しい景色が広がる。
夜になると、静かな庭園にはキャンドルの灯りが揺れ、
星空の下で流れる時間はさらにゆっくりになる。
ここでは時計を見る必要はない。
ただ歴史ある館に身を委ね、風の音に耳を傾けるだけでよい。
パラッツォ・ドンナ・エリザベッタは単なるホテルではない。
愛の物語から始まり、
世代を超えて受け継がれてきた記憶と温もりが今も生き続ける特別な邸宅なのである。
訪れる人は誰もが、その物語の新しい一頁をそっと刻んで帰っていく。
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MEMO
Palazzo Donna Elisabetta(パラッツォ・ドンナ・エリザベッタ)は、プーリア州ターラント県マンドゥーリアの歴史地区に佇む、わずか6〜8室ほどの小規模なラグジュアリー・ブティックホテルである。1881年、アルタムーラ出身の若き伯爵令嬢サビーニと、マンドゥーリアの名家トンマーゾ・スキアヴォーニ=タフーリの結婚を祝して建設されたネオクラシック様式の邸宅で、現在はドンナ・エリザベッタ・アルノによって新たな命を吹き込まれている。館内には美しいフレスコ画、アンティーク家具、優雅な階段、広大なイングリッシュガーデンが残され、貴族の私邸に滞在するような特別な時間を味わうことができる。
ホテルが位置するマンドゥーリアは、プーリアを代表する赤ワイン「プリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリア」の故郷として世界的に知られる町である。実はこの館の歴史そのものがプリミティーヴォと深く結び付いている。結婚の際、サビーニ伯爵令嬢は持参金の一部としてムルジェ地方からプリミティーヴォの苗木を持ち込み、それが後にこの土地のワイン文化発展の礎となったと伝えられている。館の庭園やサロンでは、かつて貴族たちがワインを囲みながら社交を楽しみ、地域の文化や経済を語り合ったという。今日でもホテル周辺には数多くのワイナリーが点在し、ワイン博物館や歴史的なカンティーナ巡りを楽しむことができる。
マンドゥーリアの魅力はワインだけではない。古代メッサピア文明の遺跡や考古学公園、中世から続く旧市街、美しいバロック様式の教会が残り、さらに車で20分ほど走ればイオニア海の白砂のビーチへも到着する。ホテルは街の中心部にありながら大きな歴史庭園に囲まれているため、外の賑わいと静寂の両方を楽しめる希少な存在である。
客室数が限られているため、一人ひとりへのサービスは極めてきめ細かい。各部屋は異なるデザインでまとめられ、歴史的な装飾と現代的な快適性を融合。窓の外には庭園やプール、樹齢を重ねた木々が広がり、まるで貴族の別荘に招かれたような雰囲気が漂う。屋外プールやスパ施設、優雅なテラスも備え、朝は地元食材を使った朝食が提供される。
Palazzo Donna Elisabettaは単なるホテルではない。プリミティーヴォ誕生の物語を秘めた歴史的邸宅であり、マンドゥーリアという土地の記憶そのものを宿す場所である。ワイン、歴史、貴族文化、そしてサレントの温かなホスピタリティ。そのすべてを体感できる、プーリアでも特別な隠れ家ホテルのひとつである。
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