マンダリンオリエンタル香港

香港の全部を知っているホテルが、
僕らの結婚式の舞台になる。

香港俳優、トニーレオン。

彼のいつもきっちり整髪された頭を見ると「短めのミディアムカット」だなと思う。

これは、ハサミと櫛を定規のように正確に使って刈る理容師にしかできない。

悪いけれど美容師さんにはできない。

なぜそう言うかって？

僕の父親が田舎で理容店を営んでいるから、門前の小僧ってやつ。

日本ではもう理容師も美容師も区別がないのかもしれないけれど、

香港ではやはり、男性はきちんとした技術を持つ理容室に行く。

マンダリンオリエンタルホンコン、古き良き時代の香港。

館内には理容室がある、ザ マンダリン バーバー。

おそらく、香港の政財界芸能界で有名な人々が、

プライベートルームでゆっくりとした時間を過ごしているはずだ。

一度だけ体験したことがある。

シャンプー、ヘッドマッサージ。

シェービング、フェイシャルマッサージ。

ショルダーマッサージ、仕上げの一ハサミ。

そして、整髪。

親父が丁寧にお客さんに向かい合っているあの時間を思い出した。

理容というのは、心も体も裸になってリラックスする場かもしれない。

もちろん、服は着ているけれども。

髪を切る音、シャンプーをする音、シェービングで産毛が取り除かれていく音。

１９６３年創業、今年６２年目を迎える老舗中の老舗だ。

ここは男性専門であるけれど…

花嫁は女性専用の理容室で、ドレスに合うように背中や腕の産毛を剃っているはず。

本当は親父に花婿としての僕を作ってもらいたかったのだが…。

トニーレオンになるためには、郷に入っては郷に従えの理容師さんにお任せだ。

理容室を併設しているホテルは、実は超一流である。