企業イベント Event

ゴッドファーザー（会長）の卒業式
偉大なる父（DAD）に感謝の気持ちを込めて

会長には、会長という肩書以外の人生がある。

会長はこの会社の創業者。けれど、他の多くの創業者のように、創業当時の苦労話をしつこくはしない。

聞けば、ニコニコ笑いながら、楽しかったことばかり話してくれる。

だけど、僕らは知っている。会社のために、多くの犠牲を払ってきたこと。

下げたくもない頭を下げ、時に会社のために土下座までしたことを。

会長は話さないけれど、取引先や会長を知っている人たちは、口々に、「あんなに社員とその家族のことを思っている人はいない」と言う。

会長になって、毎日出勤はしなくてもよくはなったけれど。

出勤しても、会社の玄関の掃除をしたり、花壇の手入れをしたり、

その顔すら知らない新入社員に「おじいさん、おつかれさま！」なんて言われたりしている。

…このまま、「会長」として会社に縛り付けたままの一生でいいのだろうか。僕らは知っている。

会長が若いころ、映画監督になりたかったことを。

忙しい仕事の合間に、シナリオを書いてコンクールに出していたことを。

でも、受賞内定とかの連絡があると、「私の道楽ですから忘れてください」と断ってきたことを。

人は成りたい者にはなれないらしい。

成りたいものと成れるものは、自ずと違う。

会社を立ち上げ、社長として辣腕を振るい、会社を大きくした。

そして社長でいることにしがみつくことなく、会社をもっと大きくしてくれる後進へと道を譲った。

僕らは社長が大好きだから、会長として残ってもらった。

でも、それは、会長の人生にとって正しいことなのだろうか。

幸いに、会長は、若いころから体を鍛えていることもあって、健康で寿命まで生きそうだ。

考え方も柔軟で、掃除のおじいさんのふりをして新入社員の愚痴にもいいアドバイスをしている。

いやいや、頭がキレキレだって、このまま会社のためだけに生きてもらうなんて、ダメだ。

きっと、きっとだが、会長でなくなっても、きっと、会長の思いは、この会社の中の風になる。

「会長の卒業式」を考えた。場所は会長の大好きなシチリア。

たまにパソコンで「ゴッドファーザー」のDVDをこっそり見ていることを、秘書たちが教えてくれた。

そうか、あのようなテーマの映画を作りたかったのか。確かにうちの会社の社風は、似ているかもしれない。

ゴッドファーザーの舞台、ロケ現場となったお城は、個人所有で貸し切りもできる。

うちの役員、取引先のBOSSたち、そして会長を愛する慕う人たちで、イタリア・シチリア島に「卒業旅行」に行こう。

ホテルからお城への30分の道は、15台のクラシックカーを使う。

運転手を除けば、定員は2人づつ。FIAT500に当たった部長は、大きな体を．．．（笑）。
　

お城の礼拝堂で、卒業式は行われる。通常説教壇に使われるステージに椅子が一つ。

会長がそこに座る。会長のことだ、「そんな華々しいことはやめてくれ」と言い出しかねない。

飛び降りないように、ちょっと高めに設定しようか、あくまでも安全に。

会長に向けて、参加者一人一人が、思い出やかけてもらった言葉を間髪入れずに話すリレーが始まる。

そこには、笑顔と涙と感謝で溢れている。

ゴールでは、会長に「あいだみつを」ばりの卒業証書を渡そう。引退ではないのだ。卒業式なのだ。

卒業しても、母校にふらっと寄ることはできるから。みんな会長を愛しているから。

…ここで胴上げまでしたいところだけど、それは、ちょっとやめておこう、安全第一。

礼拝堂の扉が、ゴッドファーザーのテーマとともに開くと、庭はパーティ会場になっている。

シチリア式では、ワインで乾杯がふさわしいのだろうけれど、会長の大好きな大吟醸の菰樽を置いて、鏡割り！。

そこはジャパニーズスタイル。酔っぱらう前に、自慢のスーツで記念写真。

それは、あくまでもゴッドファーザー風に。

社長から、シチリア生まれのハンチング帽が渡される。

…そういう意味で、頭のサイズを測られたのか。ジャストサイズ！
　

ゴッドファーザーのあの危険な香りがする1枚は絶対に撮ろう。

真ん中の会長は、やっぱり、僕たちのゴッドファーザーだ。

ゴッドファーザーがいて、はじめてファミリー＝会社は、世の中に認められる。

はじめて人と人は出会うべくして出会うと知る。

会長は、この瞬間から、「ＤＡＤ」になる。そして、一個人の新しい人生を歩む。

僕らはその証人になる。